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INTRODUCTION/STORY

思いがけない再会から、彼らの時間がふたたび動き出す―

『ビタミンF』『とんび』『その日のまえに』『流星ワゴン』
ベストセラー作家・重松 清史上最も泣けるせんせいと生徒の感動の物語が待望の映画化。

その高校教師は、陽に焼けた赤い顔と、鬼の熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた。甲子園出場を目指し、強豪チームを率いた黄金の時代から10年の月日が流れ、野球への情熱が衰えかけていたある日、かつての教え子・斎藤(愛称:ゴルゴ)と再会する。野球の素質を持ちながらも、挫折して高校を中退した生徒だった。しかし、立派な大人に成長したゴルゴは、病に侵され、命の期限が迫っていた。厳しさでしか教え子に向き合えなかったあの頃の後悔。赤鬼先生は、ゴルゴのために最後に何ができるのか―。

主演は、『とんび』に続く重松 清作品となる堤 真一。そして柳楽優弥、川栄李奈、更には麻生祐未、キムラ緑子、竜星 涼ら豪華キャストが集結。監督は、『キセキ-あの日のソビト-』で大ヒットを打ち出した、兼重 淳。主題歌は、本作のために書き下ろされた、竹原ピストルによる「おーい!おーい!!」。豪華コラボレーションで贈る、今だから分かり合える教師と生徒の深く胸に染みいる感動作。

CAST

[小渕 隆]教師、現・県立西高校野球部監督、元・城南工業高校野球部監督。愛称は“赤鬼先生”。

堤 真一

堤 真一

64年7月7日生まれ、兵庫県出身。87年、NHKテレビドラマ「橋の上においでよ」で主演デビュー。以降、舞台・テレビ・映画と幅広く活躍。『ALWAYS三丁目の夕日』(05)で第29回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『ALWAYS続・三丁目の夕日』『舞妓Haaaan!!!』(07)で同賞優秀助演男優賞、『クライマーズ・ハイ』『容疑者Xの献身』(08)では同賞主演・助演男優賞を受賞するなど、他数多くの映画賞に輝く。主な映画出演作に『姑獲鳥の夏』(05)、『孤高のメス』(10)、『SPTHEMOTIONPICTURE』(10.11)、『宇宙兄弟』(12)、『俺はまだ本気出してないだけ』『地獄でなぜ悪い』(13)、『土竜の唄潜入捜査官REIJI』(14)、『神様はバリにいる』『駆込み女と駆出し男』『海街diary』『日本のいちばん長い日』(15)、『海賊とよばれた男』(16)、『本能寺ホテル』『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)、『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)、『決算!忠臣蔵』(19)、『一度死んでみた』(20)。

[斎藤智之]赤鬼先生の元教え子。元・城南工業高校野球部員。野球部時代の愛称は“ゴルゴ”。

柳楽優弥

柳楽優弥

90年3月26日生まれ、東京都出身。是枝裕和監督作品『誰も知らない』(04)にて、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を、日本人初史上最年少で受賞。以降、映画・テレビ・舞台で幅広く活躍。14年には「アオイホノオ」(TX)で連続テレビドラマ初主演、「ゆとりですがなにか」(16/NTV)、NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」(17)、舞台「CITY」(19)などに出演。主な映画出演作品は、『シュガー&スパイス 風味絶佳』(06)、『包帯クラブ』(07)、『すべては海になる』(10)、『許されざる者』『ゆるせない、逢いたい』(13)、『クローズEXPLODE』『闇金ウシジマくんPart2』『最後の命』(14)、『合葬』(15)、『ピンクとグレー』『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、『銀魂』(17)、『銀魂2掟は破るためにこそある』『響-HIBIKI-』『散り椿』(18)、『夜明け』『ザ・ファブル』(19)。

[斎藤雪乃]ゴルゴの妻。

川栄李奈

川栄李奈

95年2月12日生まれ、神奈川県出身。15年にAKB48を卒業後、女優としての活動を本格化。舞台「あずみ幕末編・戦国編」(15.16)で主演を務め、16年にはNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、本年は「3年A組‐今から皆さんは、人質です‐」(19/NTV)、NHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(19)にも出演し、注目を浴びる。主な映画出演作品は、『デスノート Light up the NEW world』(16)、『亜人』(17)、『嘘を愛する女』『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』『センセイ君主』『恋のしずく』『人魚の眠る家』(18)、『九月の恋と出会うまで』『きみと、波にのれたら』(19)。

[小渕陽子]赤鬼先生の妻。

麻生祐未

麻生祐未

63年8月15日生まれ、長崎県出身。近年の主な映画出演作品は、『僕等がいた』『今日、恋をはじめます』(12)、『くちづけ』『麦子さんと』(13)、『悼む人』(15)、『キセキーあの日のソビトー』『キスできる餃子』(17)。18年は、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」、「義母と娘のブルース」(TBS)、本年は「モンローが死んだ日」(NHK)、「パーフェクトワールド」(KTV)などに出演。

[斎藤智美]ゴルゴの母。

キムラ緑子

キムラ緑子

61年10月15日生まれ、兵庫県淡路島出身。近年の主な映画出演作品は、『悪夢ちゃん The 夢ovie』(14)、『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』(15)、『ぼくのおじさん』『続・深夜食堂』(16)、『破門ふたりのヤクビョーガミ』『関ヶ原』(17)、『祈りの幕が下りる時』『SUNNY強い気持ち・強い愛』『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)など。

[和田圭吾]元・城南工業高校野球部員。ゴルゴのライバル。

竜星 涼

竜星 涼

93年3月24日生まれ、東京都出身。10年、「素直になれなくて」(CX)で俳優デビュー。12年、『ライアーゲーム-再生-』で映画初出演。近年の主な映画出演作品は、『orange』(15)、『シマウマ』『泣き虫ピエロの結婚式』(16)、『Bros.マックスマン』『君と100回目の恋』『22年目の告白-私が殺人犯です』『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17)など。

高校時代の斎藤智之(ゴルゴ)。

掘家一希

掘家一希

高校時代の和田圭吾。

武藤 潤

武藤 潤

小渕佐知/赤鬼先生の娘。

佐藤 玲

佐藤 玲

STAFF

兼重 淳

[監督]兼重 淳

67年4月29日生まれ、群馬県出身。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、犬童一心監督『眉山-びざん-』(07)、『ゼロの焦点』(09)、橋口亮輔監督『ハッシュ!』(01)、『ぐるりのこと。』(08)、是枝裕和監督『歩いても歩いても』(08)、『奇跡』(11)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)、『海よりもまだ深く』(16)などで助監督を務める。07年、『ちーちゃんは悠久の向こう』で映画監督デビュー。その他の監督作品は、『男たちの詩(スパゲッティーナポリタン)』(08)、『腐女子彼女。』(09)、 大ヒットを打ち出した『キセキ -あの日のソビト-』(17)。19年は、WOWOW連続ドラマ「神の手」(6/23放送開始)の監督を手がける。

[脚本]上平 満 兼重 淳

[音楽]Di'll(北城和美 北城浩志)

[撮影]向後光徳

[照明]斉藤 徹

[録音]大竹修二

[美術]布部雅人

MUSIC

主題歌
竹原ピストル「おーい!おーい!!」
(ビクターエンタテインメント)

初の映画主題歌完全書き下ろしとなる主題歌。
優しく情熱的な歌声と胸にしみる詞が更に感動を加速させる―。

COMMENT

引きずりこまれるように、すっかり親身になりながら、台本を読みました。
映画の中でも存分に描かれるであろう事柄達に野暮な干渉、邪魔をしないように気をつけながら、それでいて、この登場人物のこのときの状況、心境、自分にも身に覚えがあるなぁ。。といううっすらとした接点、共感を見つけて、そこから膨らませて書いた歌です。
物語をそっとかすめながら、そっと胸に響くような、そんな歌となっていたら嬉しいです。
素敵な作品に歌で関わる機会をいただけて、幸せです。

PROFILE

76年12月27日生まれ、千葉県出身。99年、野狐禅(ヤコゼン)を結成し音楽活動を本格化。03年にメジャーデビュー。その後、野狐禅を解散し、毎年約250本のペースでライブを行うなど一人きりでの表現活動を開始。17年にリリースしたアルバム「PEACE OUT」が話題となる。その後、多くの夏フェス・大型音楽番組の出演も経て、大晦日には紅白歌合戦に初出場。音楽活動に加えて役者としての評価も高く、『永い言い訳』(16)では、第90回キネマ旬報 助演男優賞、第40回 日本アカデミー賞 優秀助演男優賞を受賞。サントリーコーヒー「BOSS」のTVCMにも出演した。18年4月ニューアルバム「GOOD LUCK TRACK」をリリース、62本の全国弾き語りツアーを実施。19年2月より「Onefortheshow tour 2019 supported by 住友生命 Vitality」がスタート。
公式サイト

ORIGINAL

原作
重松 清『せんせい。』所収「泣くな赤鬼」
(新潮文庫刊)

PROFILE

63年3月6日生まれ、岡山県出身。出版社勤務を経て執筆活動に入る。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。01年『ビタミンF』で直木賞、また10年には『十字架』で吉川英治文学賞、14年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表している。著書は他に、『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『きみの友だち』『カシオペアの丘で』『青い鳥』『くちぶえ番長』『とんび』『希望ヶ丘の人びと』『ステップ』『かあちゃん』『ロング・ロング・アゴー』『きみ去りしのち』『あすなろ三三七拍子』『ポニーテール』『たんぽぽ団地のひみつ』など多数。
公式サイト

特別寄稿文

PRODUCTION NOTE

未来を感じる原作と台本との出会い原作のその先をしっかりと表現したくて

未来を感じる原作と台本との出会い原作のその先をしっかりと表現したくて

堤 真一が作り上げた人間味溢れる赤鬼先生

堤 真一が作り上げた人間味溢れる赤鬼先生

柳楽優弥が原作のイメージ通りのゴルゴに

柳楽優弥が原作のイメージ通りのゴルゴに

子供を抱いている川栄李奈を見たかった

子供を抱いている川栄李奈を見たかった

夢や想いが未来に繋がる物語にしたかった

夢や想いが未来に繋がる物語にしたかった

赤鬼先生は絶対に泣かないのか!?

赤鬼先生は絶対に泣かないのか!?

兼重 淳監督の故郷、群馬県でオールロケ

兼重 淳監督の故郷、群馬県でオールロケ

リアルに再現された高校野球のシーン

リアルに再現された高校野球のシーン

未来を感じる原作と台本との出会い
原作のその先をしっかりと表現したくて

兼重淳監督が本作の監督オファーを受けたのは、前作『キセキ-あの日のソビト-』(17)を大ヒットに導いたころだった。「重松清先生の小説は昔から大好きで、沢山読ませて頂いていました。改めて今回の原作を読み、とても素晴らしい小説で、かつ短編だからこそ、映画では物語を広げられる可能性を感じたんです」と兼重監督は語る。「背中を押される、未来を感じる映画が好きで、それが原作と上平 満さんが書いてくださった最初の台本にはあったんです。死で終わる原作のその先を描くことで、夢や想い、言葉、味などが未来に繋がる話になるといいなと思いました。台本には、『頑張る』『悔しい』という言葉が散りばめられているんですけど、その言葉って誰にも教わったこともないし、形にもならないことです。でも、大人になるにつれて、必ず覚えていく感覚ですよね。それを、赤鬼先生、ゴルゴ、妻、母…、皆が言ってる台詞に使うなんて、言葉遊びじゃないですけど、よく出来ているなと」。「そして、赤鬼とゴルゴが再会する冒頭のシーンは、原作に忠実に表現していました。そんな風に原作と台本からインスピレーションをもらいながら物語を紡ぐことがやりたくて、今回、監督をお引受けしたんです」。

堤 真一が作り上げた人間味溢れる赤鬼先生

“赤鬼先生”こと主人公の小渕隆を演じた堤真一、当時の教え子である“ゴルゴ”こと斎藤智之役の柳楽優弥、その妻・雪乃に扮した川栄李奈は兼重監督が望んだイメージ通りのキャスティングだという。「堤さんは良い意味で生活感があって、とても哀愁を感じる俳優さんです。しかし、撮影が進むにつれ、僕が原作と台本から読み取った赤鬼よりも人間味が強い、感情豊かな愛すべきキャラクターになっていったんです。もしかしたら、赤鬼は泣くんじゃないかな?とか、叱ることでしか生徒と接することができないけれど、実は根っこでは生徒のことをもっと考えていたのでは?そんな赤鬼像が見えてきた。それで、かつての教え子・和田に言われる『僕らは先生の夢を叶えるための道具でしかなかった』という言葉を、車を運転しながら考える場面や、ゴルゴの言葉を思い出しながらグラウンドを見つめる場面を追加したんですよね。答え合わせや話し合いは勿論しましたが、ガチガチに固めずに演じて頂いたので、赤鬼がどんどん変化していったんです。改めて、素晴らしい俳優さんだと感じました」。監督はその逆の例も挙げる。「西高の野球部員たちに、ゴルゴの最後の願いを叶えるために協力を仰ぐシーンで、『教え子がもう長くない。だから頼むよ、みんな』という台詞は、柔らかすぎて気持ちが伝わらない。もっと気持ちが昂っている感情を出したいと、堤さんからの提案でした。『だから頼むよ、みんな』でなく『だから頼む!』にしたいと言われて。おかげで名シーンになったと思います」。

柳楽優弥が原作のイメージ通りのゴルゴに

柳楽優弥とは、兼重監督が是枝裕和監督の助監督をしていた頃からの知り合いで、原作を読んで「ゴルゴ役には柳楽さんしか浮かばなかった」と振り返る。「ただ、ひとつ懸念したのは、柳楽さんのあの目を持った若い俳優さんが果たしているのか?ということでした。柳楽さんに高校生役から演じてもらえたらよかったんですけど、そうもいかない。初めから撮影期間を空けて、痩せて死んでいくゴルゴのシーンを最後に撮りたいと思っていましたからね。それで圧倒的な存在感と原作のイメージ通りだった柳楽さんにオファーして、若い頃を別の俳優さんが演じるダブルキャストに踏み切ったんです」。人生初の野球に挑んだ柳楽について、「撮影に入る前に実際の野球部の練習に参加してもらいましたが、柳楽さんから『特別扱いはしないで欲しい、皆と一緒のメニューでやらせてください』と。柔軟体操やランニングからキャッチボール、ノックまで全てやってもらって。でも、上手でしたね。弱った身体でキャッチボールを始めるところや、久しぶりに土を踏み締める感じ、グローブをはめて真新しいボールを受けたときの喜び、投げるときの手の感覚の懐かしさなどが、すごくよく出ています。流石だなと思いました」。

子供を抱いている川栄李奈を見たかった

「こういう川栄さんを見たかったんです」と監督は笑う。「お母さん役も、子供を抱いている姿も見たことがなかったけれど、彼女は母性を感じさせるし、可愛いさもある。見た目はヤンママみたいなのに、良妻賢母というか、本当に素敵な奥さんを演じてくれました」。「でも、川栄さんには本当に申しわけないと思っているんですよ」と続ける。「彼女に対して演出らしい演出をした覚えがないんです。ただ、赤鬼先生のところに『智くんが死んじゃう』と、訪ねてくる場面のお辞儀の仕方だけはじっくりお話しました。雪乃は、病院で赤鬼とは初対面。でも、ゴルゴがガンで余命僅かであることを、同じように病気で夫を亡くしている義母(キムラ緑子)には話し難く、どうしたらいいのか分からない。そんなときにふっと浮かんだのが赤鬼だった、という気持ちの流れであのシーンなので、後ろめたさや、戸惑いもある。だから、肩をすぼめて、ぎこちないお辞儀になるように演じてもらったんです」。「川栄さんはすごく勘がいい」と彼女を讃える言葉はとまらない。「天才なんじゃないかな?」。川栄が自然体で見事に演じる雪乃をずっと見ていて思いつくポイントもどんどん出てきたという。「彼女含め、今回の撮影ではいつも以上にそういうことが多かったですね」。

夢や想いが未来に繋がる物語にしたかった

「未来に繋がっていく話にしたいと思っていたんです」と兼重監督は本作に込めた想いを語る。「ゴルゴが息子・集の誕生日にグローブをプレゼントするところには、自分が果たせなかった甲子園の夢を幼い我が子に託すという想いがある。ゴルゴが和田に『レギュラーはやっぱりオマエだよ』と言ってグローブを渡すところでも彼に夢や想いを託していて。雪乃が義母と一緒に朝食を作っている後ろ姿を追加したのも、斎藤家のおふくろの味が嫁に伝わり、孫に伝承されていくという想いからですし、それこそゴルゴが拒んだバントは犠牲打。自分がアウトになっても仲間をひとつ進塁させるのがテーマですが、ゴルゴが死ぬ間際にするサインはそれなんです。赤鬼が見舞いに来て『どうだ、具合は?』って言うと、ゴルゴが「先生が来るときは不思議と落ち着いているんだ。きっと、ガンも赤鬼が来たらビビっちゃうんだよ」と答えますよね。その話の流れで赤鬼は甲子園を諦めたことを全て正直に話すわけですけど、それを聞いたゴルゴは自分が先生の背中を押さなくてはと考え、“死んでいく俺の夢を先生が叶えてくれよ”という想いを込めてあのバントのサインをするんです」。

赤鬼先生は絶対に泣かないのか!?

ゴルゴが旅立つクライマックスシーンは、敢えて最終日の最後に撮影された。「そこに至る、ゴルゴがどんどん痩せていくシーンを撮る前に、柳楽さんに、ゴルゴが自分の死を知るまでのシーンの映像を全て見てもらいました。柳楽さんから逆に『どれだけ痩せたらいいですか?』『頬はどれくらいこけさせればいいですか?』という質問もありましたね。僅か10日間程で、しっかりと絞ってくれました」。堤とは「撮影の途中で『ラストシーン、演じて頂いている赤鬼先生は泣きませんか?』って相談したんです」と、兼重監督は述懐する。前述した様に、堤が演じる赤鬼先生を見ているうちに、この人はとにかく生徒には厳しいけれど、実は生徒の想いをしっかりと考えていたのではと、感じ始めたという。しかし、「堤さんからは、そのときになってみないと分からないと。ですから、撮影当日も『泣けるんだったら泣いてください』と伝えましたし、川栄さんにもキムラ緑子さんにも設定や気持ちだけを話して、ドキュメンタリーの様にいきなり本番でカメラを回したんですよね。そしたら、あんな素晴らしいシーンになって。僕も、スタッフも、あの一連のお芝居をモニターで観ながら泣いていたのを覚えています」。

兼重 淳監督の故郷、群馬県でオールロケ

本作は全編、兼重監督の故郷でもある群馬県で撮影された。「是枝監督の『そして父になる』(13)も半分は前橋で撮っていますし、空が広いところが北関東の売りなので、今回も広い空と鉄塔は撮りたいなと思っていました。だから、ゴルゴが死ぬシーンも夕景の空にしたし、球場の柳楽さんが振り向くシーンも素晴らしい空じゃないですか。ああいう画が群馬だと撮れるんです」。高校野球群馬大会の決勝戦のシーンは、高崎城南球場で撮影された。「実際は前橋にある敷島球場で群馬大会の決勝戦は行われますが、少しイメージより新しかったんですよね。ですから、リアルに敷島球場で撮った方が説得力を出せるか、それとも過去と未来がクロスフェイドする城南球場でやった方がいいのか、など吟味した結果、城南球場での撮影となったんです」。

リアルに再現された高校野球のシーン

高校野球の試合のシーンは「現役時代に、東海大相模の投手や彦根東の選手だった俳優を始め、元高校球児でチームを作ってもらいました」と兼重監督は説明する。「それに、『キセキ-あの日のソビト-』でもご一緒したカメラマンの向後光徳さんが高校球児だったので、撮り方に関しては彼に任せましたね」。監督自身もオファーを受けた、一昨年の夏から高校野球の神奈川予選、埼玉予選、群馬予選を全てチェックするのと同時に、高校野球の番組を見て自分が何に感動するのかを研究したという。「インタビューシーンを含めて、部員達は必ず泣くし、保護者達も号泣していたりして、涙なしでは見られない映像が連続するんですよね。でも、それをそのままドラマでやると嘘臭くなってしまうので、こういうシーンもドキュメンタリーのように本番でいきなりカメラを回しました。そうそう、劇中で流れる城南工業の校歌は助監督のひとりが作詞してくれたもので。その詞には選手たち全員の名前が入っているんですよ」。